半側空間無視 ⑤個人的にはⅢ
今日はUSNリハでやることが多い
①眼球運動
②補足課題
③視覚走査課題
④Limbs Activation の④についてです。
【Limbs Activation】
日本語では「四肢活性化」です。左USNなら、左上下肢を積極的に使っていこうとい
うものです。原法は1992年にRovertsonが提唱したものです。内容は左上肢で文字抹消
を行ったところ、USNが軽減したというものです。
はじめにこの手法はまだ、サンプルやデータが十分でなく具体的な方法は明確ではな
いのが現状です。ただ、私個人のUSN患者への臨床では、「麻痺側上肢を使う」という
のはかなり意識しています。その方法と理由は以下の通りです。
<方法> かなりいろんな方法で使えるので、簡単にできるものを紹介します。
①数字チップのpointing
例えば1~10の数字チップを用意します。
無視が重度の場合は、右より置いてもいいです。
慣れてきたら左空間のみ、左上肢の周辺でのみ行えるようにします。
また逆唱形式でカウントダウンでもいいかと思います。
ここで「上肢をどうやって使うのか」と疑問に思うかと思います。
原法は麻痺が軽度である、つまり随意的に運動可能な患者に適応しています。
随意運動が可能であればそのままやってもらいましょう。
麻痺が重度である場合は、STが手・肘関節あたりを介助します。この場合は
患者さんの視線がターゲットを見つけて身体の動きを感じたら、それについて
いくイメージです。患者さんには「数字に手が届くように伸ばすイメージをして
ください。」と教示していきます。
肩関節の痛みには十分注意します。上肢は下肢に比べると巧緻性を得るために
支持性が低い特徴があります。肩関節は回旋筋腱板というものに支えられていま
すが、麻痺になると一度筋緊張が低下するので支持性は下がり亜脱臼になる方も
いるかと思います。それを補うように上腕二頭筋、特に長頭腱のほうから?緊張
が高まり支えるようになります。事前にOTにやっていいか、確認をとるといいか
と思います。
②計算+数字チップpointing
簡単な計算プリントを右上肢で解いてもらい、正答したら左空間のなかで
左上肢によりpointingしてもらいましょう。
<理由>
①感覚の観点から
USNには麻痺と深部感覚鈍麻を伴う患者は多くいます。
身体周辺空間は「体性感覚」をベースに構築されているといわれますが、それには
「運動」は必須となります。「感覚」と「運動」の相互連関は強いものになります。
子供は発達のなかで、自分の動く手を視覚でとらえ、両手でたたいたりするなかで自
分のものなのだと認識していきます。次第に感覚は無意識下でも認識できるものとな
り「身体スキーマ」となります。「身体スキーマ」は無意識下における身体所有感で
す。例えば、扉が閉じそうなところを入っていくときは身体をひねります。これは真
正面ではぶつかるからと無意識に環境と自己の身体の関係から調整しています。
麻痺・感覚鈍麻があるとこれが崩れます。左USNを呈する患者さんで、車椅子を駆
動しているとき、左を見れているのにぶつかる人はいませんか?一般的に身体スキー
マは身体が接触したものに波及するとされます。車を運転する際、ハンドルをもつと
車全体をこすらないで運転できることもこれに当たります。つまり、身体スキーマの
歪みからフットレストまたはタイヤまで認識できず、左USNも加わったことで壁に
接触しているのかもしれません。
長くなりましたが、麻痺・感覚鈍麻した左上下肢を動かすことは、この賦活になる
可能性が考えらえます。「これはOTのやること?」と思うかもしれませんが、目的は
あくまでもUSN、そしてADLの影響軽減です。
②半球間抑制の観点から
USN原因の説の1つに半球間抑制説があります。
この画像がわかりやすいかと思われます。私があまり机上課題をやりたくないのはこ
の説も大きな要因です。つまり麻痺側上肢が重度である場合に、非麻痺側上肢をペン操
作などで使用することは抑制の不均衡を助長しているのではないか、と思うからです。
最近ではLimbs Activationは、この半球間抑制の不均衡を是正すると考えている先生も
いらっしゃるようですので、導入に一見の余地があってもいいのではないでしょうか?