呼吸について ④排痰について
臨床上において、排痰手技が必要となる場面は少なからずあります。
重症度にもよりますが、ある程度離床できていたり、認知機能が保持されている患者さ
んには咳嗽を促すことが多い かと思われます。
「咳嗽」は
①吸気期
②声門閉鎖期
③腹筋群収縮期
④声門開放
といった流れで行われております。咳嗽によってクリアランスが図れないときは上記の
どの過程で不足があるのかを評価していく必要があります。
例
①吸気期…胸郭の柔軟性や拡張性低下、脊柱の可動性など
②声門閉鎖…声がかすれていないか、声が小さくないか
③腹筋群収縮…筋緊張、筋短縮、協調性
④声門開放…協調性とか
こんな感じで、「聴診」「触診」「視診」などをフル活用して評価します。
咳嗽がある程度できる方は、ACBTがより推奨されます。
これは「Active Cycle Breathing Technique」(アクティブサイクル呼吸法)の略です。
手順があるため、ある程度認知機能が保持されていないと最大効力は発揮できないかも
しれませんが、排痰手技としては推奨されているため根気強く指導していく価値があり
ます。
重症度が高い
重症度が高い患者さん(寝たきり)では、咳嗽を口頭指示で遂行できない場面が多くあ
ります。そういった患者さんには
①体位ドレナージ
②スクイージング
③軽打法
④バイブレーション
⑤肋間筋マッサージ
といった手技が選択されてきます。
①体位ドレナージ
重力を利用して痰の位置を移動させるものです。
例えば、右肺に痰が貯留しているとしたら、左側臥位にして痰の位置を喉頭へ近づけ
るようにすることとなります。正しく行うためには「聴診」によって痰の位置を同定し
ていくことが必要になります。
これに③軽打法を併用するとより効果的です。
軽打法では上図のように、手をカップにして胸郭をタップするように叩きます。
気管支に付着した痰を振動によって動きやすくするものです。側臥位にして上になった
胸郭を腹側・背側全体にわたってタッピングしていくと良いかと思います。
減弱していながらも自然下でムセが生じている患者さんの場合、これらによって上気道
まで喀出できる患者さんは少なからずいます。口腔外まで難しい場合は嚥下を促して、
胃酸で殺菌を試みましょう。
吸引は痰除去では極めて重要ですが、苦痛であったり、咳嗽過程を全て飛ばしているた
め機能回復といった点でみるともったいないものとなります。
ムセている⇒吸引依頼ではなく、上記手技も試してみてはいかがでしょうか。