呼吸について ③触診
基本的には最初の「視診」で説明した胸郭の動きなどを理解して、触診していきます。
STはわりと触診が苦手な人が多い印象があります。ここで伝えきるのは難しいですが、
触診する部位(筋の緊張や走行、骨など)や何の情報を得たいかを明確にしておかない
と読み取りは難しくなります。
そこが曖昧だと不安になって、不安は患者に手を通して伝わり、患者の身体は必要以上
に身構えます。なので、触る前に必要最低限の筋の走行確認しておきましょう。
<触診するとき>
・声掛けはこまめに
突然触られることほど、不安なことはありません。意識障害が重度でも声掛けはし
ていきましょう。
・手掌全体でさわる
なんとなく指先で触っちゃうかたは多いと思いますが、母指球あたりを中心とし
て、手のひら全体が余すことなく触れるようにしてください。指先はより詳細にみ
るときや骨(舌骨とか)に使うことが多いですが、どうしても力が入ってしまうの
で、できるだけ脱力して、またゆっくりと心がけます。
・触るとこを意識しすぎない。
情報を得ようとすればするほど意識は強くなって、知らぬ前にセラピストの身体は
硬くなっています。ホントかなと思うかもしれませんが、それだけで患者に伝わっ
てしまうこともありますので注意が必要です。これはリラクゼーションのときも同
様です。「ゆるめーゆるめー」と思うほどうまくはいかないので、自分の肩に力が
入っていないかなど確認しながらやってみてください。意外と力んでますので
上記のようなことを気をつけながら、まずは「胸郭の動き」を見てみましょう。
・上部胸郭・・・ポンプハンドル
前上方に動いてるか
・下部胸郭・・・バケットハンドル、キャンパーハンドル
側方へ動いているか
・呼吸様式
胸式、腹式か
※左右対称かは最低限みましょう。
例えば、脳卒中片麻痺で上肢の緊張が高い場合では、大胸筋の筋緊張も高くなって
いることも多く、そのまま連鎖して麻痺側の胸郭の拡張性が低下していることは
多々あります。
<肩甲帯>
肩甲帯は支持性が弱いので、筋緊張の影響をもろに受けます。
これは上肢動作の基盤であると同時に呼吸との関連も深いので大体でもいいから
見れるといいですね。
脊椎から肩甲骨の内縁への距離が左右対称か触ってください。
先程のように大胸筋の緊張が高いと、前面に引っ張られるので、距離が延長する
ことがあります。または、弛緩性であると肩甲骨全体が下垂して下角のラインが合わな
いことがあります。この時点で呼吸に不利であることは言うまでもありません。
<筋の触診>
・これは聴診と同じで、「ひたすら触る」しかありません。
ただ先程もいったように解剖的な知識がなければなりません。場所がいまいちわか
らない場合は、収縮をいれるとわかりやすく、また拮抗した力を加えるとよりわかり
やすくなります。
・「横隔膜」「腹筋群」「大胸筋」「胸鎖乳突筋」「斜角筋」「腰方形筋」などは
触ることが多いです。
例えば、腰方形筋は「バケットハンドル’(キャリパー)」に関わります。
まずは呼吸関連の筋についておさえ触診を行い、症例数を増やしていくことが最重要となります。