半側空間無視 ②病巣による特徴
みなさんは脳画像を正しくみることはできるでしょうか?
私は細かいところは見れませんが、ざっくりどこに何があるかを把握している程度です。
先日のブログで半側空間無視の種類をざっと説明しました。臨床で患者さんとの関わり
で「この人はこのUSNがあるな」と評価していくことは重要ですが、私は脳画像である
程度の症状を予測していきます。
最近では病巣ごとに症状がある程度把握されておりますので、見ていきましょう。
【USNの病巣】
ざっくりですが、
①前頭葉―探索性・視覚運動性の無視
②頭頂葉―知覚性・自己中心性の無視
③側頭葉―物体中心性の無視 このように分かれます。
①前頭葉
ここでは文字通り、「USN側を探索していけなくなる」。同時に非USN側の視覚刺
激に転導しやすくなるため、ますますUSN側へ向かえなくなります。
キャンセレーションなどで、最初は「右⇒左」へ探索できているのに、次第にできな
くなる患者さんはいないでしょうか?
②頭頂葉
ここでは先日説明した自己中心性です。頭頂葉は表象を行う場所でもあるため、
ここの損傷は知覚した段階でのUSNが生じるとされます。
③側頭葉
ここで先日同様の物体中心性無視が生じるとされています。
※上記であげた病巣が単発で生じることもありますが、臨床上では複数箇所にまたが
る場合が多いのではないでしょうか?その場合は上記を組み合わせてみましょう。
また、「被殻」や「視床」病変でもUSNはバンバン生じます。これは上記にあげた部
位を結ぶ連絡繊維が血腫圧迫などにより損傷されることが原因と思われます。
有名なものでは①と②を結ぶ「弓状束」と「上縦束」が挙げられますが、これは基底
核と皮質の間を走っているので、血腫がその方向に進んでいたらここが損傷している
可能性が十分考えられます。
【予後不良といわれる部位】
それは「側頭葉」に及んでものとされています。
Karnath 2011
Karnathの報告によると慢性期までUSNが残存した患者は、「側頭葉」に病変がある場合が多いとされています。
これは「能動的注意・受動的注意ネットワーク」が影響したものと考えられます。
能動的:注意を意図的に向けること。
例:車で信号やカーナビに注意を向ける。
受動的:外発的な事象に注意が勝手に向くこと。
例:急に飛び出してきた人に注意が向く。
健康な人は、この2つがバランスを保って安全な生活を送っています。
責任領域としては...
能動的注意が損なわれることで、USN側を探索していけないのかと思います
受動的―腹側経路(側頭葉、下頭頂葉)
※腹側経路は「なに経路」ともいわれ、物体の把握に関与する経路です。
ここで物体中心性無視が出やすいというのも何となくわかる気がします。
なぜ慢性化しやすいか。
ここで問題ですが、リハビリでよく行う机上課題(キャンセレーションなど)やアクテ
ィビティは上記のどこにアプローチしているでしょうか。
私見では、基本的に「能動的注意」の割合が大きく、身体周辺空間が多いかと思われま
す。臨床をしていて、「机上では左側がみれるようになってるのに、左から近づく人へ
反応遅れる・壁にぶつかるな」となることはありませんか?
つまり、能動的注意を高めすぎても、受動的注意にアプローチにしていなければ不十分
なのではないでしょうか?ただ受動的注意に特化したアプローチが確立していないこと
も事実です。個人的に考えて行っていることはありますが、別の機会に紹介できればと
思います。
こういった問題もあって、慢性化しやすい部位に側頭葉が上がっている可能性が考えら
れます。
こういった症候について参考になる文献を紹介します。
「半側空間無視の臨床所見および病態メカニズムとその評価」 保健医療学雑誌
著者:中田ら
この文献はとても参考になると思います。もしよければ見てみてください。